兄の真似をして私が初めてやったオンラインゲーム「FF11」。
月額課金制で敷居の高いこのゲームをプレイする人間は新潟のど田舎にはいなかった。
学年で80人もいない田舎の中学校。
変わり映えのしない一面の田んぼ、畑、民家。
町内の商業施設なんて駄菓子屋か八百屋に毛が生えた程度のものだった。
そんな田舎に住む子供にとって国産の大規模MMOとしてスタートした
FF11は多くの驚きと出会いを与えてくれることになる。
中学生でネトゲ。今ではさほど驚かれないが私の時代は違う。
ネットの世界で会う人はほとんどが私より年上。
兄も私も別々のキャラを作り、1台しかないPS2を代わる代わるプレイしていた。
今にして思えば厄介な子供を受け入れてくれた当時のクランメンバーの人たちには
頭が下がる。もう記憶にはないが…さぞ不快な発言をしていたことだろう。
現実と違いゲームの中の世界には見たことのない風景が広がっていた。
ヨーロッパの城のような綺麗な街並み。見晴らしのいい高原。
見渡す限りの白い砂浜と綺麗な海そこに集まる初心者たち。
「アイテム集めるの手伝ってもらえませんか?」
「一緒にパーティ組んでもらえませんか?」
今では簡単に口にすることに最初中学生の私は強く恐怖を感じた。
右も左もわからない私が都市の中を彷徨っているとあるクランが私を拾ってくれた。
クラマスは女性の方だった。面倒見が良くてお姉さんというイメージ。
副リーダーは少しツンツンする男性の方と明るくて活発に動く女性の方の2人。
今では当たり前のVCは当時なく、チャットでのコミュニケーションとなる。
声の抑揚という情報がない中でのコミュニケーションは思いの外楽しかった。
よく副リーダーの女性の方は金策と称していたいけな中学生を労働に駆り出した。
今にして思えば彼女は私をよく可愛いがってくれたと思う。
初めての中心都市への旅は自分1人でいった。
辛いとき。困ったとき。誰かに助けを求められればいいのだろうが、
昔からそういうのは苦手だった。そこは今も結局変わっていないと思う。
付近を徘徊する自分より遥かに強いモンスター。
初めて歩くフィールド。ネットで地図を見て事前に勉強してきた。
モンスターに追いかけられながら辛うじて滑り込んで入った中心都市「ジュノ」
そこからプレイできるフィールドは加速度的に増えていった。
そして同時にたくさんのクエストをクランの人たちとプレイすることになる。
今思えば純粋にゲームを楽しめた。そういう年齢だったと思う。
ただ大学受験に入るころ度重なるアップデートについていけなくなった私は
ついにFF11を辞めることになる。その頃には私は最初のクランを抜けていた。
どこで最後にログアウトしよう。思いつく限り綺麗な風景を考えた。
けど結局一番最初に降り立った場所にした。「サンドリア」始まりの街。
今でも覚えている。
私が辞めると告げたとき、ログアウトしようとするのを最後まで見ていてくれた。
面倒見の良さで多くのクラメンの手伝いをしていたクラマス。
絶賛反抗期の私が親にたいする愚痴を言うとクラマスは決まって悲しそうにした。
今にして思えば彼女は家族に対して何かしらの思いがあったのだろうと思う。
ただ当時の自分にはそれを理解することは出来なかった。
そして結局彼女は最後の瞬間まで子供の面倒を見てくれた。
久しぶりにFF11のBGM聴いたら色々懐かしくなって書いてみた。
今覚えていることもこうして書かないとどうせ忘れちゃうからね。
悲しいね。